産地のはなし
なぜ阿蘇の干し芋は甘いのか — 火山灰土壌のひみつ

おいしい干し芋の甘さは、じつは品種の力だけではありません。さつまいもがどんな「土」で育ったか——そこに大きな秘密があります。
さつまいもは「水はけのよい土」を好む
さつまいもは、湿りすぎた土が苦手な作物です。水はけがよく、ほどよく乾いた土でこそ、根に養分をたっぷり蓄えて甘く育ちます。だからこそ、昔から火山灰の土地がさつまいもの名産地になってきました。
その代表が鹿児島。シラス台地とよばれる火山灰の土壌は、さらさらと水はけがよく、さつまいも栽培にぴったり。鹿児島がさつまいも生産量で長く日本一を誇るのは、この「土」のおかげです。
阿蘇の火山灰土壌が、甘さを育てる
同じことが、熊本・阿蘇にもあてはまります。世界最大級のカルデラをもつ阿蘇の山麓には、火山灰が積もってできた土壌が広がっています。この土には、さつまいもが甘く育つ三つの条件がそろっています。
- 水はけのよさ — 余分な水を残さず、根がしっかり養分をためる
- 豊富なミネラル — 火山がもたらした養分が芋の風味を深める
- ほどよい酸性 — さつまいもが好むpHに近い弱酸性の土
ひとくちメモ:火山灰土壌は「黒ぼく土(くろぼくど)」とも呼ばれ、ふかふかと黒い土が特徴です。阿蘇のふもと・熊本県大津町は、この土を活かしたさつまいもの産地として知られています。
主役は「紅はるか」
「阿蘇山麓の蜜いも」が使うのは、いま全国で一番人気のさつまいも品種・紅はるか。ねっとりとした食感と、蜜のような濃い甘さが持ち味です。火山灰土壌で育った紅はるかは、干し芋にしたときの甘みがひときわ豊かになります。
収穫してからが、本当のはじまり
さつまいもは、収穫してすぐより、少し寝かせた方が甘くなります。これは「貯蔵熟成」と呼ばれる工程で、保管している間にでんぷんが糖に変わり、甘みが増していくためです。じっくり貯蔵し、低温でていねいに乾燥させることで、蜜がにじむしっとりとした干し芋に仕上がります。
——土、品種、そして時間。阿蘇の干し芋の甘さは、この三つが重なって生まれます。